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2012年10月1日

ネットとの付き合いの中で意識していた9つのこと

Category:[ これからのこと, つぶやき ] Tag:[ ]

モバツイ5周年でいただいたバラ。Facebookのアプリを利用して116本が届けられ、ネットの力を強く感じた出来事のひとつでした。

 

マインドスコープのバイアウト以来記事を書いていませんでしたが、今年6月末の吸収合併と同時にマインドスコープを退職し、モバツイの運営から離れて3ヶ月が過ぎました。今は自分の今後を模索している最中なのですが、ふと自分がネット上で(本業以外で)何をしてきたかを書いてみたくなり、久々にブログを更新しようと思いました。

23年くらいの私とネットとの歴史は、その大半が「人と人、人とネットがつながる場所をつくり、見守る」時間でした。この中で私が意識していたのは、このようなことでした。例により長いので(5200字)目次を作りました(笑)

見えないルールを見えるようにする

高校2年生のとき(1990年)にパソコン通信の草の根ネットのBBSに初めて書き込みをして、その後大学生になってシグオペ(掲示板の管理人)となりました。シグオペとしてやっていたことは「暗黙のルールの明確化」でした。そうすることで交流の敷居を下げられると考えていたからです。

初心者が勇気を出して初めての投稿をしたとき、それがたとえルールを逸脱していてもその行為を許容することが、ルールを伝える第一歩だと思いました。書き込んだことが(どこにも書かれていない暗黙の)ルールに当てはまっていないと、常連が一斉に叩くような当時の傾向を変えたいと思いました。

当時はあまり理解されない考え方だったと思いますが、ほとんど年上の男性しかいない掲示板で、だんだんみなさんが理解してくれるようになり、運営にやりがいを感じていたのをよく覚えています。

伝わりそうなことを選ぶ

大学4年生のとき(1996年)に、デジカメを購入したのを機に初めてホームページを公開しました。池袋のサンシャインシティを取材し、お店などの情報を載せるというものでした。制作はすべて私が行い、企画や取材は彼氏(今のだんな)と一緒にやりました。Yahoo!にも掲載されたのですが、当時はサンシャインシティの公式サイトがなく、広報部の方と連絡を取ったりしたこともありました。

サイトのメインコンテンツは、サンシャインシティにあるお店のリストとその評価でした。専用の取材シートを作り、お店に実際に行って調べたことを書き、それをHTML化するというものでした。

今思うと、最初に手がけたサイトがこういった情報サイトでよかったと思います。自分の伝えたいことを伝えるのではなく、見る人が必要そうな情報を想定してコンテンツを作れたことは、今後の私の仕事につながる大事な経験だったと思っています。

自発的に学べる場所を提供する

1998年にWebチャットに目覚め、「みるくすたんど」というチャットサイトを立ち上げました。完全初心者向けというのがコンセプトでした。完全初心者向けにこだわってやったことは大きく2つ。1つはレベル別にチャットを分けたこと。もう1つはを参加する前にルールを読んでもらうフローにしたことでした。

初心者とそうでない人用のチャットを設けることで、初心者のための場所という認識がされやすくなると考えていました。ルールについては、何かを強制するものではなく「こういうことを意識したほうが楽しいよ」という書き方にしました。内容としてはマナーとかのほうが近かったのかもしれませんが、あえてルールと呼ぶようにしました。押し付けているようで押し付けていない微妙な表現をしたかったので。

初心者というのは、その時点での知識はあまりないかもしれないけれど、意欲はとても高いと思っています。その意欲を自由に生かすような環境だと、驚くほどスキルが上がるのですよね。必ずしも手取り足取り教えればよいというものではなく、自分で学びたいと思える環境を作るほうがよいんだろうなと思います。

メンバーのことを理解し、任せる

2000年、チャットサイト運営の経験をきっかけにWeb制作の仕事をやってみたいと思うようになり、デジハリ渋谷校のWebデザイナー総合Proコースの1期生となりました。

当時の同期の有志が集まって、原宿にある商店街の公式サイトの制作に関わることができました。公式サイトでしたので、お店の方への取材も任されました。また、当時はまだ出たばかりだったi-modeサイトの制作も行いました。今思うとかなり自由度の高いプロジェクトでした。

制作に50人以上が関わるプロジェクトで、私は何人かいるディレクターの一人でした。クライアントがいる状態でのサイト制作も、ディレクターも初体験。チームにはサイトの運営を自分ですでにやっているような人もいれば、まったくの初心者という人もいたりして、スキルには大きな差がありました。

それぞれの人の得意なこと・苦手なことを把握しつつ、できるだけ彼らがやりたいことをやってもらうことで、モチベーションを下げずにまとまりを持たせようとしました。特に「全員がWeb制作に関わること」は意識しました。スキルがあまり高くない人で、作業に時間がかかるような場合でも任せて待つようにしました。

上下ではなく横のつながりを作る

デジハリ卒業後、フリーランスでWeb制作の仕事を始めて2年後の2002年、プロ・アマを問わないWeb制作者のためのコミュニティ「W-step」を立ち上げました。当時はメーリングリスト(ML)での交流がメインでした。最終的には350人くらいの規模となりましたが、実際にプロとして活動している人よりも「プロになりたい人」の割合のほうが高かったように思います。

ここで意識していたことは、プロとアマチュアの混合コミュニティである中で、プロが上、アマチュアが下、という意識を持たせないようにするということでした。プロだろうがアマチュアだろうが、Web制作そのものに対する熱意は変わらないんです。スキルの高低より熱意の上下を重視したいと思っていました。また、地域の違いによるコミュニケーション不足をなるべく解消したいと思っていました。

MLでは毎月「調査テーマ」を決めて、調べて感じたことをMLで発表するといったことをやっていました。たとえば「美術館のサイトを調べよう」とか。ML内の有志でサイト制作プロジェクトもいくつか立ち上げました。月に1〜2回行われていた定例チャットや、最低でも年に4回程度は全国で行っていたオフ会、定期的に行っていた新メンバー紹介など、横のつながりを生むために試行錯誤していました。

プロとして活動しているほうがむしろ現実に追われてWeb制作に関する夢とか熱意を忘れてしまっていたりして、アマチュアの方の熱意ある発言を見て影響されることもあり、プロとアマチュアの混在コミュニティというのはとても有意義だったなあと思っています。

教えるのではなく経験を伝える

上記のコミュニティから生まれたプロジェクトの中でもっとも大きく長期間続いたものが、2002年から2004年まで活動したStep-FirstというボランティアのWeb制作チームでした。プロ・アマチュア混合の女性12名でスタートし、その後最大で23人までメンバーが増えました。なぜか全員女性だったのですが、メンバーには今もWeb制作の現場で活躍している人が実は結構います。

運営していたのは、Web制作に関する情報サイト「Webふぉれすと」。サイトの企画、チーム編成などをすべてメーリングリストとチャットだけで進めました。2年間で25000通のメールのやりとりが行われました。

私はチームリーダーでプロデューサーとして全体を見る立場で、それ以外にデザイン全体を見るアートディレクターと、進行管理的なチーフディレクターがいて、コンテンツごとにもディレクターがいました。組織としてはピラミッド構造でしたが、一人ひとりに重要な役割が与えられていました。

Webふぉれすと制作にあたってチームで意識していたもっとも重要なことは、「教えるのではなく、経験したことを伝える姿勢でいること」。サイト内には技術的な内容もありましたが、上から目線の文章はディレクターによって容赦なく修正されました。プロとアマチュアが一緒にひとつのサイトを作る上で、そういった意識を持っていることは、みんなでスキルアップに取り組む姿勢にもつながったのではないかと思っています。

伝えたいことをリアルの場で形にする

2005年ごろから、WebSig24/7(以下WebSig)というWeb制作関係者の集まるコミュニティのモデレーター(スタッフ)として活動を始めました。主な活動はイベントの運営で、Web制作に関わるさまざまな人を招いてお話をしていただいたり、参加者同士でディスカッションをしたりするような内容でした。他にもこういったコミュニティはいろいろあるのですが、WebSigの場合イベントひとつひとつのコンセプトをしっかり決めてから講演者を選ぶので、企画に時間がかかります。思いつきでやらないんです。

自分たちが伝えたいことや実現したいことをやり遂げることが優先されていて、お客さんにどう楽しんでもらうかというのはその次なんですよね(←素直に書きすぎて言い方がよろしくないですが、すごく褒めてます)。だから方針がぶれないし、呼ぶ人にも本当に個性があります。ボランティアでの運営にも関わらず、ひとつひとつに真剣なモデレーターたちの姿から学ぶところはとても多かったです。

ネットでの活動は本来、リアルでの活動と深く関連しています。リアルでの行動がなければネットでの行動は広がらないと思います。以前は私の中でもっとネットとリアルが断絶されている感じがあったんですが、WebSigでの活動を通じて、ネットとリアルの深い関連性を実感することができたように思います。

操作方法よりも楽しさを伝える

2007年に日本でTwitterがブームとなった直後、当時はまだリリースして日が浅かったgihyo.jp にてTwitterの初心者向けの連載をスタートしました。時にはユーザーに直接アンケートをとったり、企業担当者に取材をしたりしながら、初心者がTwitterを楽しむきっかけになるような記事を書くようにしていました。

声をかけていただいたきっかけが、個人的に書いたTwitterの操作に関するQ&Aのまとめ記事が出版社の方の目に触れたことでした。操作がどうこうというよりは、「未知の世界について、楽しいよ、おいでよ、と伝える」ということを考えていたつもりです。結果としてそのあと書く仕事をいくつかいただくことになり、非常に勉強をさせていただきました。

素敵な人同士はどんどんつなげる

上記のような活動をしつつ、個人的なオフ会の企画を時々やってきました。やったオフ会の数はもう100回は越えているのではないかと思います(20年間で、年に5回で100回なので、それくらいはたぶん…)。基本的に私の知り合い同士が知り合う場になることが多いです。私自身がステキな人と分かっている知人同士が知りあえば、ステキな繋がりになる可能性が高いと思っているからです。

ネットは出会いの場としても価値はありますが、私はそれよりもすでにある関係を維持発展する場としての役割のほうが大きいと思っています。直接会ってどんな人か分かっている人とそうでない人の発言は、ネットでの見え方が結構違います。だからできるだけ直接会ってその人を知りたいと思っているし、会わないで勝手に判断したくないとも思います。

【まとめ】本当に好きなことに気づくための3ヶ月

インターネットの仕事をするようになって今日でちょうど12年。できることはなんでもやってきましたが、この3ヶ月間仕事をしない日々を過ごしてきて、「ネットを通じて人をつないだり、知らない人にネットについて伝えたりすること」が純粋に好きなのだなあと気づいた感じがします。

今回こうして自分のやってきたことを振り返りながら書いてみて、答え合わせをしている気持ちになっています。Web制作もその手段のひとつではあるのでずっと関わってきたのですが、根本にある気持ちはここにあったんだなと思いました。

これからもこういう活動をずっとしていきたいと思っています。微力ながら、もっともっとインターネットが簡単に、楽しく、身近になる流れをつくる人のひとりになりたいと思っています。

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このブログ記事を拝読して、猛烈に感動しました。
2年ほど、更新されてないようですが、他の記事も是非、拝読したいので、しばらく閉鎖しないで頂きたいです。
お願い申し上げます。

Comment by あおやま — 2015年10月20日 6:29 PM

[…] ■株式会社エフシーゼロ(http://fc0.vc/) ■藤川さんのブログ記事より「ネットとの付き合いの中で意識していた9つ… […]

ピンバック by 富山でコンテンツSEO! スタジオ・アイルができるまで【第一話】 — 2015年10月26日 8:02 PM

あおやまさん、非常にコメントの公開が遅くなってすみません。すっかり年に1度くらいしか更新しないブログになっていましたが、読んでくださってありがとうございます。
だいじょうぶです、まったく更新してませんが閉鎖はしません^^;
感想、とてもうれしかったです。ありがとうございます!

Comment by fuuri — 2015年12月20日 11:36 AM

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